企業名が入ります

派遣と聞くと、多くの方が「期間限定で安定しない」というイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、派遣には「派遣会社の正社員」という形式も存在します。これは派遣会社の正社員として無期限で雇用され、派遣先で働く仕組みです。

 

ただ、「派遣会社の正社員」について調べてみると、「やめとけ」という否定的な意見を目にすることも少なくありません。その理由は、一般的な正社員とは異なる特徴や注意点があるからです。

 

本記事では、「派遣会社の正社員はやめといたほうがいい」と言われる理由を詳しく解説するとともに、この働き方がどのような人に向いているのかを具体的に掘り下げていきます。

 

派遣会社の正社員としての働き方が自分に合っているかどうかを判断するための参考にしてください。

派遣会社の正社員がおすすめではないと言われる理由

「派遣会社の正社員」(※以下、正社員型派遣とする）とは、派遣会社と無期雇用契約を結び、派遣先企業で業務を行う働き方を指します。別名「無期雇用派遣」や「常用型派遣」とも呼ばれ、派遣先企業での契約が終了しても雇用契約が継続する点で従来の派遣と異なります。

 

一般的な登録型派遣に比べて安定していると思われる一方で、実際にはさまざまな課題や不安要素があり、「おすすめではない」と言われることもあります。以下では、その理由について解説します。

雇用が不安定で将来に不安が残る

正社員型派遣は派遣会社と無期雇用契約を結んでいるため、直接的な解雇リスクは低いといえますが、派遣先企業との契約が不安定である以上、勤務環境が安定しているとは言えません。

 

派遣先企業での業務が終了すれば、次の派遣先が決まるまで「待機状態」になり、この期間も給与は支給されるものの、収入に対する心理的不安は残ります。

仕事の多様性が逆にストレスになる

正社員型派遣は、多様な経験を積む機会を得られる一方で、頻繁な業務変更がストレスになることも少なくありません。派遣先が変わるたびに業務内容や求められるスキルが異なるため、短期間で順応する柔軟性が常に求められるのです。

 

特に、業務が自分の適性や興味と合わない場合でも、派遣先を変更することは難しく、精神的な負担が増す可能性があります。

社会的評価が低いと感じる

正社員型派遣という肩書きに対しては、社会的な認知が追いついておらず、一般的に「正社員」として評価されにくいというのが現実です。「派遣」という言葉には、日本の労働市場においてネガティブなイメージが根強く、正社員型派遣であっても周囲から「安定していない」「転職が多い」といった偏見を持たれることがあります。

 

また、派遣先企業においても、その立場はあくまで「派遣社員」であり、正社員とは異なる対応を受けるケースが少なくありません。しかし、これらは一部の考え方に過ぎず、自分自身が必要以上にネガティブに捉えるべきではないでしょう。

福利厚生が正社員と比べて充実していない

正社員型派遣には、雇用主である派遣会社が提供する福利厚生が適用されます。ただし、その内容は派遣会社によって異なり、一般的な正社員と比べると必ずしも充実しているとは限りません。

 

派遣会社で提供される福利厚生には、健康保険や厚生年金といった法定福利が含まれていますが、家賃補助や健康診断補助などの法定外福利については、会社ごとに差があります。

職場環境が不安定で人間関係の悩みが増える

人間関係の悩みは、正社員型派遣に限らず、「派遣」という働き方全般に共通する課題といえるでしょう。派遣先企業の正社員と同じ業務を担当していても、立場の違いから一体感を得にくく、時には疎外感を覚えることもあります。

 

さらに、ようやく業務に慣れ、職場の雰囲気にも馴染んだ頃に派遣先の変更を求められるケースも珍しくありません。そのたびに新しい環境へ適応する必要が生じ、この繰り返しに負担を感じる人は多いのではないでしょうか。

派遣の正社員と一般的な正社員の違い

正社員型派遣と一般的な正社員では、異なる点がいくつかあります。下記は、各雇用形態の特徴を比較した表です。

以下で、それぞれの違いについて見ていきましょう。

雇用主

派遣の正社員と一般的な正社員の最大の違いは「雇用主」にあります。

 

一般的な正社員は、勤務先企業と直接雇用契約を結び、その企業が雇用主となります。

 

正社員型派遣は、実際に働く場所が派遣先企業であるにもかかわらず、雇用契約を結ぶのは派遣会社です。つまり、派遣の正社員にとっての雇用主は派遣会社であり、派遣先企業は労働の提供先に過ぎません。よって、派遣先企業で日常的に働いていても、立場は「派遣社員」として扱われることが一般的です。

契約期間

一般的な正社員は、契約期間の制限がない無期雇用契約が基本であり、自主退職や企業による正当な解雇理由がない限り、雇用が継続されます。

 

正社員型派遣は、派遣会社とは無期雇用契約ですが、派遣先企業との契約は有期契約です。そのため、契約期間が終了したり、何らかの理由で派遣先企業との契約が打ち切られたりすると、新たな派遣先への異動が必要となり、その過程で「待機期間」が発生する場合もあります。

給与やボーナス

一般的な正社員は、企業の賃金体系に基づき、役職や経験に応じた昇給制度やボーナスが設けられ、企業の業績に応じたインセンティブが付与されることも多いです。このため、定期的な昇給や業績連動のボーナスが期待でき、収入の安定性や成長性が得られるのが特徴です。

 

正社員型派遣は、派遣会社との契約に基づいて給与が決まります。派遣先企業の業績には左右されず、派遣会社の賃金規定に従って支給されるため、安定した収入が得られる一方で、ボーナス面では一般企業に比べて支給額が少なかったり、支給がない場合もあります。

福利厚生

一般的な正社員は、勤務先企業の福利厚生を直接受けることができます。多くの企業では、健康保険や厚生年金をはじめ、住宅手当、交通費補助、研修制度などの法定外福利厚生も充実しており、これが働く人にとって魅力の一つとなっています。

 

正社員型派遣が受けられる福利厚生は、雇用主である派遣会社が提供する内容に限られます。派遣会社から提供される福利厚生には、法定福利である健康保険や厚生年金が含まれるものの、法定外福利厚生の内容や充実度は会社によって異なるのが実情です。

キャリアアップ・スキルアップ

一般的な正社員は、勤続年数や成果に応じて社内での昇進やキャリアアップの機会が与えられ、研修制度などを通じてスキルアップも図ることができます。特に、自社のビジョンに沿って人材育成を行うため、社内でのポジションが上がるにつれ、より高度なスキルや専門性を身につけることが可能です。

 

正社員型派遣は、派遣先企業で業務を行う立場であるため、派遣先企業での昇進やキャリアアップの機会は限られています。また、派遣先企業でのスキルアップは、派遣先の業務内容に依存するため、自分が希望するキャリアに直結する経験を積むことが難しいでしょう。

正社員型派遣のメリットとデメリット

正社員型派遣という働き方には、一般の正社員にはないメリットとデメリットがあります。以下で、詳しく解説します。

メリット：安定した収入や多様な経験

安定した収入の確保

正社員型派遣であることの大きなメリットの一つは、無期雇用契約による安定した収入が得られる点です。正社員型派遣は月給制で給与が支払われ、派遣先企業が決まらない待機期間中であっても、一定の収入が保証されます。

 

登録型派遣社員であれば派遣先企業が変わるたびに収入が途切れる不安がつきまといますが、正社員であればそのような不安を感じることなく、安定的な生活基盤を築くことが可能です。

多様な職場経験とスキルの習得

正社員型派遣は、さまざまな派遣先企業での勤務を通して多様な業務経験を積むことができます。短期間で異なる職場や業務に触れる機会が増えるため、幅広い知識やスキルを短期間で身につけやすいのが特徴です。さまざまな業界の仕事の進め方を学べるため、柔軟にキャリアを形成したい人にとっては大きな魅力といえるでしょう。

 

さらに、派遣先企業での経験を積むことにより、業界や企業文化の違いを理解し、柔軟に対応できる適応力も養われます。これは、将来別の職種や業界へ転職する際にも役立つスキルとなるでしょう。多様な経験を積みたい、または特定の職種に絞らず新しい環境での成長を望む人にとって、正社員型派遣という働き方は非常に価値のある選択肢と言えます。

デメリット：選択肢の少なさと世間からの低い評価

選択肢の少なさ

正社員型派遣は、派遣会社が指定する派遣先企業で勤務するのが基本です。そのため、自分の希望やライフスタイルに合わせて働き先を自由に選べるわけではありません。

 

派遣先企業や業務内容の選定は、派遣会社が主導することが多く、「この企業で働きたい」や「特定の業務を担当したい」といった希望が叶うとは限りません。キャリアプランに沿って計画的にスキルを磨きたい人や、特定の業界や企業で長く働きたいと考える人にとっては、選択肢の少なさは大きなネックとなります。

世間からの低い評価

「正社員型派遣」という肩書きは、世間一般にあまり理解されておらず、誤解を招くことも少なくありません。「派遣」という言葉に対して否定的なイメージを持つ人も多いのが現状です。

 

さらに、派遣先企業の正社員と同じ職場で働いていても、立場の違いからチーム内で疎外感を覚えたり、キャリア評価に差を感じたりする場面もあります。関係性を築きにくい環境や、昇進や昇給の機会が限られていることから、モチベーションの維持が課題となるでしょう。

正社員型派遣は本当にやめるべきか？

ここまで、正社員型派遣について、一般的な正社員との違いやメリット・デメリットについて解説してきました。ややネガティブな印象を抱かれたかもしれませんが、果たして本当に正社員型派遣はやめたほうが良いのでしょうか？

 

答えは、一概には断言できません。なぜなら、正社員型派遣という働き方が適している人もいれば、そうでない人もいるからです。以下で、その適性について詳しく解説していきます。

【正社員型派遣が適している人】

正社員型派遣が適している人には、以下のような特徴があります。

・安定した収入を求める人

・多様な業務や新しい職場環境での経験を楽しめる人

・柔軟な適応力がある人

・幅広い経験やスキル習得を重視する人

・キャリアの方向性がまだ定まっていない人

 

安定した収入を求める人
正社員型派遣は無期雇用契約によって、派遣先が決まらない待機期間中も給与が支払われます。そのため、通常の登録型派遣社員のように収入が途切れる心配はなく、生活基盤を安定させたい人にとっては魅力的です。

 

多様な業務や新しい職場環境での経験を楽しめる人：
固定的な業務や一つの職場に縛られるよりも、多種多様な経験を積むことに魅力を感じる人にとっては、正社員型派遣は理想的な選択肢です。変化をポジティブに受け入れ、楽しめる人には適しています。

 

柔軟な適応力がある人：
派遣先の変更に伴い、業務内容や人間関係が変わることが多いため、新しい環境に迅速に適応する力が必要です。柔軟な適応力がある人は、多様な職場で新たなスキルを身につけながら自己成長を実感できるでしょう。

 

幅広い経験やスキル習得を重視する人：
特定の専門性を追求するよりも、異なる職場や業務を通じて多面的なスキルや知識を習得したい場合には、この働き方が向いています。さまざまな経験を積むことで、自分の可能性を広げたい人にとって魅力的な環境です。

 

キャリアの方向性がまだ定まっていない人：
キャリアの目標が明確でない場合、正社員型派遣として働くことは、自分の興味や適性を探る良い機会となります。新しい経験を積む中で、自分に合ったキャリアビジョンを見つけるきっかけになるでしょう。

リスクを理解した上での選択肢ならOK

前述したように、正社員型派遣にはいくつかのデメリットがあります。それらを事前に理解した上で、この働き方に魅力を感じるのであれば、有意義な選択肢となるでしょう。

 

自分の価値観やキャリア目標に照らし合わせて、正社員型派遣という働き方が自分に合っているかを慎重に見極めることが大切です。何を優先するべきかを明確にし、リスクとメリットを冷静に比較することで、より充実した働き方が実現できるはずです。

ブラックな派遣の正社員を避ける方法

派遣業界には、ブラックな労働環境を提供する企業が一部存在することも事実です。適切な会社を選ばなければ、労働条件が悪く、長期的なキャリアに悪影響を及ぼすリスクが高まります。ここでは、ブラックな派遣会社を避けるための具体的な方法について解説します。

派遣会社選びのポイント

ブラックな派遣会社を避けるためには、派遣会社を慎重に選ぶことが重要です。選定の際には、以下のポイントを意識しましょう。

 

【労働環境や待遇の透明性を確認する】

派遣会社が提供する労働条件や待遇が、透明かつ明確に提示されているかを確認しましょう。たとえば、求人情報に給与体系や福利厚生、休暇制度が詳細に記載されているかどうか、面談時にそれらを直接確認できるかが重要です。

特に、待機期間中の給与や、派遣先が見つからない場合の対応について質問することで、その会社の姿勢を見極めやすくなります。

 

【評判や口コミを調べる】

インターネット上の評判や口コミは、派遣会社の実態を知るための有益な情報源です。転職サイトや口コミ掲示板などで、実際にその派遣会社で働いた経験がある人の意見を参考にしましょう。

ただし、口コミは匿名性が高いため、情報が偏っている可能性もあります。ポジティブな意見とネガティブな意見をバランス良く比較し、総合的に判断することが大切です。

 

【登録面談や説明会での対応を観察する】

登録時の面談や説明会での担当者の対応も、会社を見極める重要なポイントです。担当者が親身に相談に応じ、給与や福利厚生、派遣先での仕事内容について丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。

対応が雑でないこと、一貫性があること、そして相談に対して誠実に対応してくれる姿勢が見られれば、その派遣会社は信頼できる可能性が高いといえます。

 

正社員としての就職活動の進め方

正社員型派遣として働くには、長期的なキャリアビジョンを描き、それに基づいて就職活動を進めることが大切です。派遣先企業でスキルアップやキャリアアップの機会が得られるかを確認することはもちろん、派遣会社が提供する研修や資格取得支援制度の充実度も、成長において欠かせないポイントとなります。

 

また、満足度の高い就職活動を実現するためには、労働条件や派遣会社のサポート体制の確認が必要です。給与体系や福利厚生の内容、そして待機期間中の給与保証がどの程度あるかをしっかり確認しましょう。

 

加えて、面接の際には、派遣先企業の選定基準や派遣期間終了後のフォロー体制についても質問し、派遣会社が自分のキャリアプランをどれだけ尊重してくれるかを見極めることが大切です。

 

正社員型派遣という働き方を最大限に活かすためには、自分の将来像を見据えつつ、働きやすい環境と充実したサポート体制を兼ね備えた会社を選ぶことが成功への鍵となります。

 

派遣を活用する際の注意点

正社員型派遣として、ブラックな働き方を避け、満足のいくキャリアを築くために以下のポイントに注意しましょう。

【派遣先企業の環境を確認する】
正社員型派遣として勤務する場合、実際の職場環境は派遣先企業に依存します。業務内容や人間関係、職場の雰囲気などは事前にすべて把握することが難しいものの、派遣会社の担当者から過去の派遣スタッフの体験や職場の特徴について情報を得ることができます。特に、人間関係や残業の多さについて確認することで、働きやすい職場環境かどうかを見極めましょう。

 

【早期のキャリア見直しと転職も視野に入れる】
働き始めた後に「自分に合わない」と感じた場合は、早い段階でキャリアの見直しを検討することも大切です。正社員型派遣として働きつつ、他の働き方について情報収集を進め、柔軟に転職の選択肢を確保しておくと良いでしょう。こうした準備を怠らないことで、将来の労働環境の変化にもスムーズに対応できます。

 

【自己管理とセルフマネジメント能力を高める】
勤務先が変更される機会が多い派遣社員にとって、自己管理やセルフマネジメント能力の向上は欠かせません。スケジュール管理やキャリア形成の計画をしっかり立てるとともに、派遣会社のサポートを活用しながら、自分でもスキルアップや新しい業務への適応に努めることが重要です。こうした努力は、柔軟な働き方を可能にし、結果としてキャリア形成を円滑に進める力となるでしょう。

まとめ

正社員型派遣という働き方には、安定性や柔軟性、多様な経験が得られるといった魅力があります。一方で、派遣先が変わるたびに職場環境への適応が求められたり、社会的な偏見に直面することもあるのが現実です。

 

しかし、この働き方に伴うリスクを理解した上で自分に合った派遣会社を選び、そのメリットを最大限に活かすことができれば、安定と成長を両立させた新しいキャリアの形として十分に価値を見出せるでしょう。

 

自分にとって最適な選択肢を見つけ、納得のいくキャリアを築くための第一歩を踏み出してみてください。